大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ナ)5号 判決

原告 佐保田作次 外一名

被告 東京都選挙管理委員会

一、主  文

原告等の請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  実

原告等は、昭和二十七年十二月六日執行せられた東京都北多摩郡神代町長選挙に関し被告が昭和二十八年三月十日なした裁決を取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として次のとおり主張した(但原告佐保田作次については、民事訴訟法第百三十八条により陳述したものと看做した訴状による、なお右訴状には牛越元吉の当選有効確認の裁判をも求めている)。即ち、

昭和二十七年十二月六日に行われた東京都北多摩郡神代町長選挙において山岡柳吉は町長に立候補し当選した。しかるに、(い)、山岡柳吉は右立候補当時神代町長に就任中である外に、東京都農業委員会委員(以下農業委員という)及び神代町固定資産評価員(以下評価員という)の公職をも兼任していたにも拘らず、立候補届出書に現町長の職にあることを記載しただけで右兼職を表示しなかつたのは違法である。また、(ろ)、山岡柳吉は右兼職から辞任しないからその当選を失うべきものである。よつて原告佐保田作次はこのことを主張して、神代町選挙管理委員会に異議の申立をしたところ、同委員会はこれに対し、山岡柳吉が右兼職を有することを認め、且評価員は公務員であるから公職選挙法第八十九条第一項の規定に該当し、従つて山岡柳吉の得票は同法第六十八条第一項第二号の規定により無効であるとし、また、兼職を辞さない場合には公職選挙法第百三条の規定により当選を失うものとし、及び農業委員と評価員とを兼任することは地方税法第四百六条の兼職禁止の規定にも反するものとして右異議申立を容れ、昭和二十八年一月十三日山岡柳吉の当選を無効とする旨の決定をなし、牛越元吉の繰上げ当選を告示した。しかるに山岡柳吉外一名は右決定に対し被告に訴願をなしたところ、被告は山岡柳吉はその立候補当時神代町長及び農業委員の職にあつたが、評価員に任ぜられていたものではなく、地方税法第四百四条第四項の規定によりその職務を行つていたのに過ぎない。従つて、山岡柳吉はその立候補を妨げる職になかつたものであつて、その立候補届出書に農業委員の職名を記載しなかつたことも当選の結果に異動を及ぼすことはないものとして右訴願を容れ、昭和二十八年三月十日前示決定を取消す旨の裁決をなした。しかしながら前記異議に対する決定は正当であつて、これを取消した右裁決はもとより不当であるところ、原告等は永年神代町に居住し町長選挙権を有し右裁決の結果につき重大な利害関係を有するから右裁決の取消を求めるというのである。

被告指定代理人は、原告等の請求を棄却するとの判決を求め、原告等の主張事実中山岡柳吉が神代町長立候補当時評価員であつたことはこれを否認するも、その余の事実はこれを認める。

而して神代町選挙管理委員会の決定は審理不尽、理由不備であり、これを取消した被告の裁決は正当であつて、原告等の本訴請求は失当であると答弁した(立証省略)。

三、理  由

山岡柳吉は昭和二十七年十二月六日執行の東京都北多摩郡神代町長選挙に立候補当選したところ、原告佐保田作次は右当選の効力に関し同町選挙管理委員会に異議を申立てたため、同委員会は右異議を容れ昭和二十八年二月二十一日右当選無効の決定をなしたこと、これに対し山岡柳吉外一名は被告に訴願をなしたところ、被告は同年三月十日右異議の決定を取消す旨の裁決をなしたことは当事者間に争がない。原告等は、山岡柳吉は右選挙に立候補した当時神代町長の外農業委員及び評価員の職にあつたのであるが、立候補届出書に町長の職名だけを記載したのは違法であつて、同人に対する投票は無効であるか、または同人はその当選を失つたものである旨を主張するを以て案ずるに、山岡柳吉が右立候補当時神代町長及び農業委員の職にあつたことは被告において認めるところである。しかるに山岡柳吉がその当時評価員に任ぜられていたことについてはこれを認めうる証拠がなく、却て真正に成立したと認められる乙第三、第四号証、証人山岡柳吉の証言によれば、山岡柳吉はその当時評価員に選任せられていたものではなく、地方税法第四百四条第四項に基き町長として評価員の職務を行わせられていたのに過ぎないことを認めることができる。従て山岡柳吉が評価員であつたことを前提とする原告等の主張は到底採用することができない。また、山岡柳吉はその立候補届出書に農業委員の職名を記載しなかつたのであるが、(この事実は当事者間に争がない)公職選挙法第八十九条、第一項同施行令九十条第三項第一号別表備考の規定によれば、農業委員は在職のまま町長の選挙に立候補をなすを妨げないことが明であつて、このような職名は立候補の届出書にこれを記載する必要のないことは、同施行令第八十八条第一項に規定するところであるから、この点の原告等の主張も理由がない。しからば以上と同趣旨の本件裁決は相当であつて原告等の本訴請求は失当たるを免れない。

よつて訴訟費用の負担については民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決をする。

(裁判官 薄根正男 岡崎隆 奥野利一)

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